ちぇんじ 後日談⑩ 終
- 2015/05/17
- 15:04
はぁ、と息をつきながらドサリとベッドへ身を預けた。
全てを吐き出した上で疲れた身体はすんなりと吸い込まれるようだった。
その隣にはまだ少し息荒く必死に酸素を吸い込んでるクラトス。
「…俺様の事、知ってくれた?」
その問い掛けに間を置いてから頷くクラトス。
お互いに絡めあった指がまだ熱が篭っているのを感じる。
「あ!セックスの事だけじゃねーから!俺様と一緒に旅行してって事!」
気恥ずかしくてつい付け足した。俺様もクラトスも裸なのに。
でも、間違いではない。
知り合う良い機会になった筈だ、この旅行は。
まさかここまで知り合うことになるとは思っていなかったが。
「ああ、お前が意外とノリ気だったのと…」
笑いを浮かべながら言いかけたクラトスの口を俺様の手で覆った。
どうせ最中の事を言いたかったのだろう。
やっとクラトスのナカにたどり着いたと思いきや、締め付けがキツく挿れただけでイキかけた。
冷や冷やしつつも律動すれば、クラトスは小さく喘ぐしそれにつられてか不規則に締め付けてくる。
だけど絡めあった指をしっかり握ってても、クラトスは眼を伏せていて酷く寂しく感じた。
だから、つい言ってしまったのだ。
俺の事ちゃんと見て、感じて欲しい。と
襲ったのも主導権握ってるのも俺様な筈なのにお願いするのは俺様の方でまるで立場が逆だった。
「だって、俺様の事見ねーんだもん…」
フンとふてくされてみせると、クラトスの含み笑いが聞こえた。
くしゃり、と頭を撫でられて心地良いと思った。
「まさか、お前がこう来るとは思ってなくてな…」
根っからの女好きだっただろう、と言われれば否定が出来ない。
自分ですら信じられないのだ。男を好きになるなんて。
かと言って、ロイドくんやら知り合いの裸を思い浮かべるだけで吐き気と鳥肌が立った。
「俺様だって、信じらんねぇ…」
スルリ、と絡めてた指が離れた。それだけで急に寒く感じる。
よたりと起き上がったクラトスが立ち上がろうとするのを手首を引っ張って制止する。
「風呂はまだ無理だから」
よっ、と勢いつけて起き上がる。多分その一言で通じたであろう
クラトスはまたベッドに身を預けていた。
一通り綺麗に身体を拭き終わり、水分補給をしながら
ぐちゃぐちゃに乱れたベッドを申し訳程度に整えた。
熱の引き、ほどほどの疲労がある身体はベッドへ沈み込むだけで抵抗はしない。
クラトスも慣れない疲れからか、眼を閉じてそのまま動かない。
寝てるように見えて、つい口端が綻ぶ。
「天使サマの寝顔ってこんなんなのかなーかわいー」
「そんなわけないだろう」
「いっつも眉間に皺寄せて難しい顔すんのやめたら?」
「これはもうクセだ」
「童顔だもんね、皺なくて喋らなかったら全然威厳とかないし」
「お前こそ締まりのない顔をやめたらどうだ…」
「え?そんなんしたら俺様更にモテちゃうし、締まるのはクラトスのっ…」
隣に並んで寝そべっていたおかげで重力を味方につけた裏拳が俺様の頭に直撃した。
ゴスッて、絶対痛い音した。鍛えてる男の拳でそれは凶器だろう。
「なにすんだ!」
「少し黙ってろ…」
裏拳の当たった場所を撫で付けながら、クラトスの方を見れば
疲れたと言わんばかりのオーラを放っていた。
「1時間…」
「へいへい…1時間ね」
言葉が足りなくても、わかった。わかってしまう事にすら笑いが零れた。
1時間何をしてるか、寝るのは勿体無い。
せっかく気を許して隣でクラトスが身体を休めているのだ。
眼を閉じてるクラトスの横顔を見ながら1時間過ごすのも悪くない。
途中で怒られそうだから、視線はたまにしか向けないようにしよう。
裏拳をしたまま放り出されているクラトスの手を握り、指を絡めながらそう考え付いた。
外は今日も快晴で、爽やかな風が舞い込んでくる。
言葉を投げあうのも楽しいけど、穏やかな沈黙も悪くない。
そう思いながら旅行最終日を締めくくる俺様だった。
おまけ
「あ、結局お土産買ってねぇ…」
「…別にロイドは怒らないぞ」
「いや、俺様とクラトスの記念日だし?」
「はっ…?何の事だ」
「えっ?付き合った記念日…」
「付き合うとは言ってない、可能性もない」
「ひどい!俺様のカラダが目当てだったのね!?」
行きの沈黙は何処へやら、帰りは賑やかだった。
それでも、コトは致したが付き合わない関係にもやもやとする。
いや、まだこれからだから!これから良い関係気付いて添い遂げるから!
と必死にもやもやを打ち払うように頭をブンブン振った。
その行動で俺様の髪がクラトスを攻撃している事に気付いた時にはもう遅かった
俺様の髪は掴まれ、その後はまるでリードのように扱われつつ帰路についたのだった。
おわり
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